移住の下見に行くだけで、交通費と滞在費あわせて12万円が全額出る街があります。山口県山口市です。
山口市の支援とは、移住を検討する段階から補助を出して呼び込み、住み始めたあとは保育料と医療費の自己負担をゼロに寄せる制度群です。ただし金額が公開されていない制度も混じります。収録している山口市の14制度から金額と条件を整理します。
下見の費用は45歳未満なら100%、それ以外は半額
山口市UJIターン訪問補助金制度は2つのメニューに分かれます。若者農山村エリア訪問は1人あたり交通費上限5万円・滞在費上限7万円で補助率100%、お試し訪問は交通費上限3万円・滞在費上限5万円(グループ単位)で補助率50%。100%になるのは18歳以上45歳未満の若者向けだけです。
共通条件は、事前に職員との相談を完了していること、他の公的補助を受けていないことで、転勤・進学・就職による転入予定者は対象外。利用は年1回、通算3回までです。相談前に旅程を組むと対象外です。
引っ越し費用は上限20万円、率が変わる条件が3つ
山口市UJIターン者移転費用補助金制度は、引っ越し費用等の3分の2で上限20万円、要件に当たらない場合は2分の1で上限20万円です。上限額が同じでも補助率で戻る額は変わります。3分の2が適用されるのは、45歳未満、15歳未満の扶養者がいる、農山村エリアへ転入する、のいずれかの場合です。
対象は山口県外から山口市へ移住し、農山村エリアの事業者や「やまぐちしごと応援サイト」登録事業者に就職、または第一次産業に就労する人で、新規学卒者は対象外です。就職先がこの枠に入るかが分かれ目です。
リフォームは工事費の10%、デジタル商品券なら上限が倍になる
山口市安心快適住まいる助成事業は、工事金額(税抜)の10%を商品券で交付します。紙商品券なら上限5万円、デジタル商品券なら上限10万円と、受け取り方を選ぶだけで上限が倍変わります。
要件は、新築後1年以上経過した住宅、工事金額が税抜10万円以上、市内業者との直接契約です。他の公的助成の対象となる工事は使えません。工事完了後に転入・転居する家屋も対象で、先着順、予算に達し次第終了します。
空き家バンク関連は、金額が公開されていない
空き家バンク改修事業補助金と家財道具等処分事業補助金の2本は、いずれも補助額が交付要綱によるとされ、金額が公開されていません。いくら出るかは市への確認が必要です。改修補助は対象地域も限定され、仁保、秋穂二島、秋穂、徳地、阿東の5地域で成約した物件に限られます。家財道具等処分の補助は登録物件の所有者か売買・賃貸契約した入居者が対象で、賃貸借なら所有者の承諾が要ります。
保育料は第2子以降の3歳未満児が無料、年齢差も同時入所も問わない
第2子以降の3歳未満児の保育料は無料です。強みは条件のゆるさで、所得、きょうだいの年齢、同時入所の有無を問いません。上の子がすでに卒園していても対象です。認可施設は原則手続き不要ですが、18歳以上の子や別居の子がいる場合は申立書が必要。認可外施設は事前に「多子世帯利用給付認定」を受けたうえでの償還払いになります。
ファミサポは年44万4,000円まで無償、ただし認定が先
ファミリー・サポート・センターの利用料が無償化されています。3歳から5歳児は月37,000円、年額換算で最大44万4,000円まで。0歳から2歳児は市民税非課税世帯が対象で、月42,000円、年額換算で最大50万4,000円までです。
落とし穴は手続きの順番です。無償化には事前に「保育の必要性の認定」(認可保育所と同等の就労等の要件)が必要で、認定なしに使い始めても無償になりません。対象は保育料相当分で食材料費は保護者負担。他の無償化対象サービスの利用状況により、上限額が月11,300円や16,300円に下がることもあります。
産後ケアは4つの型すべて無料
産後ケア事業は、母乳支援型1回、日帰り型3日、訪問型1回、宿泊型7日まで利用でき、利用料は無料です。多胎は回数が拡大されます。対象は産後1年未満で山口市に住民登録のある産婦と赤ちゃん。ただし医療機関によっては食費・おむつ代・個室代などの実費が別途必要で、無料とは限りません。こんにちは赤ちゃん事業は生後4か月までの家庭が対象ですが、費用は市への確認が必要です。
医療費は18歳年度末まで自己負担なし、ただし受給者証が要る
乳幼児医療費助成制度とこども医療費助成制度で、小学校入学前から18歳到達後最初の3月31日まで、保険診療の自己負担分が全額助成されます。高校生世代への拡大は令和6年10月1日から。保険給付外の診療や入院時の食事代は対象外です。受給者証の交付申請が必要で、これがないと窓口で助成を受けられません。
預け先は1日2,000円から、通園制度は月10時間まで
一時保育・緊急一時保育は1日あたり0歳児2,500円、1歳以上2,000円。対象は保育施設未入園の就学前児童で、利用は月14日以内、緊急一時保育は最長2か月までです。
こども誰でも通園制度は、生後6か月から満3歳未満の子どもが月10時間まで利用できます。料金は1時間300円(30分150円)、生活保護世帯は無料、市町村民税非課税世帯や所得割合算額77,101円未満の世帯は1時間100円で、1時間以上から30分単位です。
子育て支援短期利用事業は、ショートステイが原則月7日以内、トワイライトステイが6か月以内。利用料は年齢・内容・所得に応じた実費負担で、施設の状況により利用できない場合もあります。
山口市をどう見るか
弱いのは情報の見通しです。空き家バンク関連の2制度は補助額が要綱によるとされ、こんにちは赤ちゃん事業も費用の記載がありません。住まいをこの2本で組み立てようとすると、金額が分からないまま計画することになります。改修補助は5地域限定という制約もあります。
効くのは、移住を決める前の段階への投資です。下見の費用は45歳未満なら全額、引っ越し費用も条件次第で3分の2が戻ります。住み始めてからも、第2子以降の3歳未満児の保育料無償は所得も年齢差も問わず、産後ケアは4つの型すべて無料と、条件のゆるさが目立ちます。ただしファミサポの無償化も訪問補助も事前の認定や相談が前提で、山口市は「先に窓口へ行った人」に開かれています。