3人目の子どもが1歳になった年に、50万円が給付される街があります。山口県下関市です。
下関市の子育て支援とは、18歳までの医療費と小中学校の給食費を無料にしたうえで、第2子以降の保育料と第3子以降の現金給付で多子世帯に傾斜をかける設計です。住宅支援は「まちなかへ寄せる」都市政策と一体になっています。収録している下関市の14制度から、金額と条件を整理します。
第3子以降は1歳で50万円、6歳で20万円、15歳で10万円
多子世帯子育て応援給付金は、第3子以降の子1人につき1歳時に50万円、6歳時に20万円、15歳時に10万円を給付します。各回1回限りで、所得制限はありません。
条件は居住実績です。基準日(令和8年10月1日)時点で高校生年代までの子を3人以上養育し、下関市に1年以上住所があることが必要で、転入してすぐでは対象になりません。生活保護世帯と施設入所中の児童は対象外です。
保育料も第2子以降は全額無償です。きょうだいの数え方は同一世帯で生計を同じくしているかで判定し、施設の在籍や年齢差は問いません。最年長の子を第1子と数えるため、上の子が高校生や大学生でも下の子は第2子扱いです。無償になるのは保育料だけで、給食費や行事費などの実費は別途負担。認可外施設等の利用には保育の必要性の認定と償還払い申請が必要です。
医療費は18歳年度末まで自己負担ゼロ、所得制限もなし
乳幼児、小学生・中学生、高校生等の3助成を合わせ、保険診療の自己負担分が18歳到達年度末まで全額助成されます。所得制限はありません。高校生世代の通院・調剤が対象になるのは令和7年12月1日診療分からです。
対象外は共通で、食事代、健康診断、予防接種、薬の容器代、差額ベッド代などの保険適用外の費用、学校管理下のけがで日本スポーツ振興センターの給付対象となる場合、交通事故など第三者行為による負傷、生活保護受給者と児童福祉施設入所児です。
手続きの注意は2点。乳幼児医療費助成は申請日の属する月の初日からの助成で、出生の場合のみ60日以内の申請で出生日まで遡ります。県外で受診した場合は、いったん窓口で全額を支払い後日払戻し申請が必要です。
給食費は無償、ただし就学援助からは外れた
市立小中学校の学校給食費は無償です。令和8年度の給食費相当額は小学校1食390円、中学校1食455円。財源は県の補助金とボートレース未来基金で、社会経済情勢により金額改定の可能性があります。
一方、無償化に伴い令和8年度の就学援助では給食費が援助対象外になりました。就学援助は学用品費、新入学用品費、修学旅行費、通学費等が対象で、生活保護基準の1.3倍までの5段階の所得区分により援助割合が50〜100%に変わります。通学費は小学校4km、中学校6kmを超える場合に限られます。
見落とされやすいのは、毎年度の申請が必要で自動更新されないことです。認定は申請月の翌月分からのため、年度初めに出し忘れた分は戻りません。
妊婦健診14回、里帰り出産だと使えない
妊婦健康診査は14回まで公費負担、多胎妊娠は追加で5回までです。ただし対象は下関市に住民登録がある人に限られ、里帰り出産などで他市町村に住民票がある場合は使えません。県外で受診する場合は1か月前までに健康推進課への連絡が必要で、受診券が使えない施設ではいったん自己負担し、市の基準に該当する項目のみ後日払戻しになります。
母子健康手帳の交付を受けると、子育てタクシーのクーポンが片道10回分交付されます。1回あたりの助成額は市への確認が必要です。有効期限は出産予定日から365日後まで。使える区間は自宅と医療機関の間および一部の店舗・施設に限られます。
産後ケアは4か月以降なら宿泊1回無料の枠がある
ほっとひといき宿泊施設活用産後ケア事業は、1組(母子)につき1回、宿泊型産後ケアを無料で利用できます。対象は出産後4か月から1年未満で、4か月未満は対象外。実施期間は令和8年7月29日から令和9年2月25日の平日のみで、県指定の宿泊施設は市外枠が少なく予約が取れない場合があります。この利用は市の産後ケア事業全体の利用回数に算入されます。
通常の産後ケア事業は産後1年未満が対象で、自己負担があります。金額と回数上限は市への確認が必要です。利用には事前の電話相談と申請書提出が必要で、希望日の3日前(閉庁日を除く)までに手続きします。
住宅補助は「まちなかに寄る」ほど厚くなる
下関市住宅取得支援事業は、基礎額30万〜150万円に子ども加算(1人目30万円、2人目以降1人20万円)を加えた額と、建築・購入費用(税抜)の50%のいずれか少ない額です。上限は下関駅周辺地区が200万円、居住誘導区域内は100万円(基礎額50万円)、区域外も100万円(基礎額30万円)。対象は3年以上市外に居住し転入予定または転入後1年以内の方、あるいは1年以上居住誘導区域外に居住し区域内や駅周辺地区へ引っ越す方です。契約締結前の申請が必須で、契約後の申請は対象外。先着順で予算がなくなり次第終了します。
賃貸なら、まちなかへの転居費用補助が1世帯5万円または10万円です。10万円になるのは土砂災害警戒区域等から居住誘導区域内へ転居する場合と、区域外から下関駅周辺地区へ転居する場合。補助額は敷金・礼金・前家賃・仲介手数料の実費が上限で、賃貸借契約の締結前に申請し市の承認を受ける必要があります。先着順です。
空き家バンク物件の改修費用補助は対象工事費の2分の1、上限50万円。市内業者の施工が条件で、補助決定前に着手した工事や3親等以内の親族からの取得は対象外です。
下関市をどう見るか
弱いのは妊娠期です。妊婦健診は住民登録が前提で、里帰り出産では助成が使えません。産後ケアの無料枠も産後4か月以降、平日のみと制約が多く、産直後のいちばん苦しい時期には届きにくい設計です。
効くのは、子どもが多い世帯と、まちなかに住む選択です。医療費18歳まで無料、給食費無償、第2子以降の保育料無償、第3子以降に合計80万円という重ね方は厚く、住宅補助も駅周辺なら上限200万円まで伸びます。ただし住宅系は3本とも先着順か契約前申請が条件で、動く順番と時期で結果が変わります。就学援助の毎年度申請も同じです。下関市の支援は金額こそ大きいものの、こちらから取りにいかないと落ちてこない構造です。