移住して家を建てると、飛騨市からは現金とは別に、毎年60kgの米が10年間届きます。
飛騨市の支援制度とは、外から移り住んで家を取得する人への厚さと、妊娠・出産期の細かい実費助成の二本柱です。ただし現金以外の形で渡される給付や、上限額が「満額」ではない制度が多く、額面をそのまま受け取ると期待を外します。収録している飛騨市の15制度から、金額と条件を整理します。
住宅の「最大230万円」は加算を全部積んだ額
飛騨市住宅新築・購入支援助成金は1住宅につき最大230万円です。ただしこれは加算をすべて満たした場合の額で、基本額は10万〜30万円にとどまります。取得価格が1,000万円未満なら基本額は10万円です。そこに移住50万円、市内業者施工30万円、宅地造成最大50万円、リフォーム費用の3分の1で60万〜150万円といった加算が積み上がって、ようやく230万円に届きます。対象は自ら居住する住宅で、併用住宅は住宅部分が延床の2分の1以上であること。令和7年7月1日以降は断熱等性能等級4かつ一次エネルギー消費量等級4以上の省エネ基準適合が必要になりました。令和10年3月31日までに完成すること、予算の範囲内であることも条件です。
米10俵は現物、しかも近くに親族がいると対象外
米10俵プロジェクトは1世帯につき毎年度1俵(飛騨市産米60kg)を10年間、計10俵。市外から転入し、転入後3年以内に市内に生活の本拠となる住宅を新築または購入した人が対象です。落とし穴は二つあります。飛騨市内に二親等以内の親族が居住している人は対象外であること、そして祝い金ではなく米の現物であることです。
奨励金10万〜15万円は地域通貨か商品券
飛騨市移住奨励金は世帯人数に応じて10万円〜15万円相当。ただし支給されるのは電子地域通貨さるぼぼコインまたは市内共通商品券で、使えるのは加盟店に限られます。受け取れるのは移住から1年が経過した後です。ここでも近い親族が市内にいないこと、5年以上定住する意思があることが要件になります。
下見の段階から補助が出る、ただし2回まで
飛騨市移住促進補助金は、移住相談の交通費が1世帯2回まで上限1万円、下見の宿泊費が費用の2分の1で1世帯2回まで上限3万円。引越費用は引越業者に支払った額の2分の1で上限5万円ですが、転入後1か月以内の引越しであることが条件です。交通費・宿泊費はいずれも2回という回数の壁があります。
東京圏からの100万円は基準額ではない
東京圏からの移住支援金は世帯移住100万円・単身60万円、18歳未満の同伴者1人につき30万円加算。ただし令和6年4月1日以降のテレワーク移住は世帯50万円・単身30万円に下がります。住民票を移す直前の10年間に通算5年以上かつ直前1年以上、東京23区に在住または東京圏から23区へ通勤していたことが必要で、5年以内に転出すると返還対象です。
不妊治療の助成は期限が二段構え
特定不妊治療費助成は1回の治療につき上限30万円、子ども1人につき通算10回まで。保険適用の治療は、まず岐阜県へ治療終了後6か月以内に申請し、県の決定後6か月以内に市へ申請します(全額自費なら市へ直接6か月以内)。この期限を逃すと受け取れません。不育症治療費助成は自己負担額の2分の1で上限30万円、申請前に市内に1年以上住んでいることと市税の滞納がないことが要件です。一般不妊治療費助成は年額5万円が上限ですが自己負担の2分の1までで、しかも連続する2年間限りです。
妊娠・出産期は少額の実費助成が並ぶ
妊婦歯科健診は自己負担500円、ただし市の指定歯科医療機関のみ。新生児聴覚スクリーニングは1回3,700円で、超えた分は自己負担、転出すると受診票が使えません。産婦健康診査は産後2週間と1か月の各1回5,000円。妊婦通院費助成は通院距離に応じて5,000円〜20,000円ですが、7回以上の通院と市内1年以上の居住が条件です。こども医療費は18歳年度末まで保険診療分が全額助成されます。
県外・県内どちらで受診するかで手続きが変わる
こども医療費も母子家庭等医療費助成も、窓口で無料になるのは岐阜県内の医療機関で受診した場合に限られます。県外で受診したときは、いったん自己負担を支払ったうえで後日申請して払い戻しを受ける形です。どちらも保険適用外の診療、予防接種、健康診断、文書料、入院時の食事療養費や差額ベッド代は対象外で、母子家庭等医療費助成は受給者証の交付を受けていることが前提になります。不妊・不育症の通院費助成も同様に、往復1kmあたり20円と単価は明確ですが、治療費助成の交付決定を受けていることが前提で、単独では申請できません。市の助成なら治療費助成と同時申請、県の助成なら県へ申請した後に市へ申請する順序になります。
飛騨市をどう見るか
強いのは移住と住宅です。住宅助成の加算、奨励金、米、下見や引越しの補助まで並び、外から来て家を建てる人には厚い。一方で、そのほとんどに「市内に近い親族がいないこと」「5年以上定住する意思」が付き、親族の近くに住む人は弾かれやすい設計です。給付の形も現物や地域通貨が多く、自由に使える現金は見た目より小さくなります。子育て分野は医療費助成を除けば数千円から数万円の実費助成が中心で、住宅分野ほどの規模はありません。