子ども2人を連れて東京23区から移り住むと、移住支援金だけで300万円が出る街があります。広島県呉市です。
呉市の支援制度とは、移住と住宅取得に予算を集中させ、子育ては妊娠期の医療費助成で支える組み立てです。申請のタイミングに厳しい制度が多く、動く順番を間違えると金額がゼロになります。収録している呉市の14制度から、金額と条件を整理します。
移住支援金は2人以上世帯100万円、子ども1人ごとに100万円加算
呉市移住支援金は、1世帯につき2人以上世帯で100万円、単身で60万円です。これに18歳未満の帯同者1人につき100万円が加算されます。夫婦と子ども2人なら、100万円に200万円が上乗せされる計算です。
条件は重く、移住前10年間で通算5年以上、かつ直前1年以上、東京23区に在住または通勤していたことが必要です。さらに広島県のマッチングサイト掲載企業への就業、テレワーク、起業、地域活性化事業への従事のいずれかに該当し、転入後1年以内に申請し、5年以上定住する意思があることが求められます。そして予算がなくなり次第終了します。年度の後半に思い立っても間に合わない可能性があります。
住宅取得は中古で最大150万円、登記の前に申請しないと消える
呉市移住希望者住宅取得支援事業は、中古住宅が基礎額50万円で加算を含め最大150万円、新築一戸建て(高い省エネ性能)が基礎額90万円で最大100万円です。中古住宅は新耐震基準を満たすものに限られ、補助額は購入額の2分の1が上限になります。
加算は、新婚・子育て世帯で30万円、親との同居で10万円、居住誘導区域内で10万円、島しょ部で10万円、解体新築で50万円という構成です。中古のほうが上限額が大きいのは、この加算の積み上げ方によるものです。
最大の落とし穴は申請時期です。所有権登記が完了する前に申請しなければ対象外になります。契約を済ませて登記まで進めてから市役所に相談しても、その時点で受けられません。ほかに5年以上の居住、町内会への加入、市税の滞納がないことが条件で、市の他の住宅補助との併用はできません。
市外からの移住でない場合は、呉市新婚・子育て世帯定住支援事業があります。中古一戸建てまたは新耐震基準を満たす中古マンションを取得する新婚世帯・中学生以下の子がいる世帯が対象で、基礎額30万円(購入額の2分の1以内)、加算を含め最大100万円。親世帯との近居(同一小学校区内または2km以内)で10万円、居住誘導区域内で10万円、解体新築で50万円が加算されます。こちらも購入・登記の前に申請しなければ対象外です。
移住前に1週間13,000円で暮らしてみられる
呉市移住お試し住宅事業は、1週間13,000円、2週間26,000円で滞在できる制度です。光熱水費、駐車場1台分、共益費が含まれます。対象は呉市外に居住し移住を検討している18歳以上60歳未満の人で、滞在中に移住に関する活動を行うことが条件です。
使用開始希望日の30日前までに空き状況の確認と仮予約が必要です。住宅は蒲刈地区の2DKで、基本的な家具はありますが寝具はありません。ペット不可、屋内禁煙で、安芸灘大橋の通行料と光熱水費の超過分は利用者負担です。
空き家の家財処分に最大10万円、捨てる前に申請する
呉市空き家家財道具等処分支援事業は、1件につき処分費用の2分の1、上限10万円です。対象経費はごみ処分費、機材レンタル料、許可業者への委託費、家電リサイクル料です。ここも順番が命で、家財道具等を処分する前に申請しなければ補助を受けられません。さらに交付決定を受けた後に呉市空き家バンクへ登録するか、不動産事業者と媒介契約を結ぶことが条件です。すでに登録済み・契約済みの物件、新たな所有者や利用者が決まっている物件、マンション、解体予定の物件は対象外になります。
不育症は年30万円、国の制度と合わせても上限は30万円
呉市不育症治療費助成事業は、夫婦1組につき1年度あたり上限30万円です。保険適用外の検査・治療費が対象で、2回以上の流産・死産・早期新生児死亡を経験し、医師の不育症診断があることが条件になります。入院時の食事代、差額ベッド代、分娩費用、他制度と重複する助成分は対象外。国の助成制度と併せても上限は30万円までで、1,000円未満の額は算定されません。
不妊治療費助成は、一般不妊治療(人工授精)と令和8年4月1日開始の特定不妊治療の2区分があります。特定不妊治療は広島県特定不妊治療支援事業の承認決定通知書と証明書の写しが必要で、県の助成決定を受けていることが前提です。助成額と回数は市への確認が必要です。
初回産科受診料助成は、住民税非課税世帯またはこれに準ずる低所得世帯の妊婦が対象で、1回の妊娠につき1回、上限10,000円の償還払いです。医療機関や市の伴走型支援に関する情報共有への同意が条件で、保険適用の診療は対象外になります。
風しんの抗体検査と予防接種は無料、期間限定
妊娠を希望する呉市在住の女性と、その女性や妊婦と同居している家族は、風しん抗体検査・予防接種がともに無料です。予防接種は抗体検査で抗体価が不十分だった人に限られ、すでに抗体価が十分な人、過去に予防接種を受けた人、罹患した人は対象外。実施期間は令和8年4月1日から令和9年3月31日までと区切られています。
骨髄移植等で免疫が失われた子どもの予防接種再接種費用助成は、接種前の承認申請が必須で、事後申請は認められません。ワクチンごとに年齢上限があります。
呉市をどう見るか
弱いのは子育ての日常部分です。病児・病後児保育は市内在住児童なら無料と手厚いものの、市内3施設のみで、利用には「テオテ」システムのアカウント作成と施設登録が事前に必要です。乳幼児健診や新生児聴覚検査は費用の記載がなく、実際の自己負担は市への確認が必要になります。県外で健診を受けた場合の償還払いも、自己負担額と市の委託料単価の低いほうまでしか戻りません。
効くのは、移り住んで家を買う人への集中投資です。移住支援金の加算構造は子どもの人数がそのまま金額に跳ね返り、住宅取得支援も中古なら最大150万円。ただし、この街の制度は例外なく「先に申請、後に実行」を求めます。登記の前、処分の前、接種の前。順番を守れなかった人にはびた一文出ない、という割り切った設計です。