高校に入学してから30日を過ぎると、糸島市の6万円は受け取れなくなります。
糸島市の子育て支援とは、妊娠期から産後、保育料、医療費までを一つずつ金額で刻んでいく積み上げ型の設計です。大きな一時金で呼び込むタイプではなく、妊婦健診11万6,810円分や第3子以降の保育料無償化といった、日常的な出費を減らす制度に厚みがあります。収録している糸島市の12制度から、金額と条件を整理します。
返還不要の6万円、ただし申請期限は入学から30日
糸島市奨学資金は、高等学校等へ入学した生徒1人につき6万円を1回限り給付する制度です。返還は不要です。対象は令和8年度に入学した生徒がいる世帯のうち、生活保護受給世帯、児童扶養手当を受給しているひとり親世帯、就学援助受給世帯、世帯全員が市民税非課税または均等割のみ課税の世帯のいずれかに該当する場合に限られます。所得要件を満たさなければ対象外です。最大の落とし穴は申請期限で、入学した日から30日以内と非常に短く設定されています。入学式前後の慌ただしい時期に、自分で気づいて動く必要があります。
きょうだいの年齢を問わない第3子以降の保育料無償化
第3子以降かつ満3歳未満の子について、保育料が無償になります。効くのは数え方です。国の基準では保育施設を利用しているきょうだいだけを数えますが、糸島市はきょうだいの年齢条件を撤廃し、同一世帯の子を数えます。上の子が小学生でも中学生でも、3人目は3人目として扱われるということです。ただし無償化の対象は満3歳未満に限られ、令和7年9月分の保育料からが対象です。届出保育施設や企業主導型保育を利用する場合は月額4万2,000円または3万7,000円台の上限が設けられています。市による保育の必要性の認定も前提となります。
妊婦健診は11万6,810円分、ただし使える県は3つ
妊婦健康診査は1人につき14回分の健診と子宮頸がん検診の別券、合計11万6,810円分が助成されます。1回あたりの助成額は5,100円から2万1,860円と健診の種類ごとに決まっており、上限を超えた分は自己負担です。注意したいのは使える範囲で、助成券が使えるのは福岡県・佐賀県・大分県の医師会加入医療機関と福岡県助産師会加入の助産所に限られます。里帰り出産などで県外の医療機関にかかった場合は、償還払いの申請が必要です。妊婦歯科健診は妊娠中1回のみ無料で、受診の目安は16~27週頃。糸島市から転出すると受診券は使えなくなります。
産後の負担は「課税世帯かどうか」で変わる
産前・産後ヘルパー派遣事業は1時間500円です。無料になるのは生活保護世帯と市民税非課税世帯のみで、それ以外の世帯には費用がかかります。利用上限は妊娠中20時間、産後60時間(多胎児は20時間加算)で、1回最大2時間・1日2回まで。交通費は実費相当額を直接事業者へ支払います。産後ケア事業も同じ線引きで、宿泊型は市民税課税世帯が1日2,500円、生活保護・非課税世帯が1,000円。訪問型は課税世帯が1日1,000円、生活保護・非課税世帯は無料です。宿泊型は産後4か月未満で原則7日以内、訪問型は産後1年未満で5回まで、1回最大3時間という制限があります。多胎児は自己負担額に50%が加算される点も見落としやすいところです。
産婦健診5,000円が2回、新生児聴覚検査は6,000円
産婦健康診査は1回5,000円を上限に最大2回分、産後8週未満に受けるものが対象です。目安は産後2週間前後と1か月前後。新生児聴覚検査は上限6,000円で、初回の1回のみが対象です。生後90日以内に受けたAABRまたはOAE検査に限られ、再検査や確認検査は助成されません。いずれも上限を超える分は自己負担です。
子ども医療費は3歳が境目、高校生世代は令和8年4月から
子ども医療費助成制度は、0~2歳が通院・入院とも無料、調剤は全年齢無料です。3歳以上の通院には同一医療機関につき月500円までの一部自己負担金がかかり、医科と歯科は別々に計算されます。保険診療外の費用は対象外で、所得制限はありません。高校生世代は通院・入院・調剤とも自己負担なしとなりますが、適用は令和8年4月診療分からです。
空き家の家財処分は上限15万円、着手前の交付決定が必須
空き家活用推進補助金は、相続登記5万円、贈与登記5万円、家財処分15万円を上限に、対象経費の2分の1を補助します。市街化区域外はそれぞれ5万5,000円・5万5,000円・15万5,000円です。対象は1年以上空き家となっている戸建て住宅で、法人所有は除きます。認定団体への贈与を除き空き家バンクへの登録が要件で、同一物件につき1回限り。市税の滞納がないことも必要です。契約前に事前相談を行い、交付決定を受けてから工事等に着手しなければ対象になりません。空き家バンク自体は登録料・利用料とも無料ですが、売買や賃借にかかる費用は当事者負担です。
糸島市をどう見るか
弱いのは移住や住宅取得への直接的な支援です。空き家関連は登記や家財処分の実費を半分補う性格で、上限も15万円台にとどまります。移住してきた人に現金を渡すタイプの制度は収録範囲に見当たらず、「移住先として糸島を選ぶ動機」を制度で作りにいってはいません。
効くのは、すでに住んでいる人の妊娠・出産期です。妊婦健診11万6,810円分、産婦健診5,000円が2回、聴覚検査6,000円、そして産後ケアとヘルパー派遣と、産前産後の1年間に制度が集中しています。第3子以降の保育料無償化できょうだいの年齢条件を外している点も、多子世帯には実額で効きます。
ただし産後の負担軽減は、課税世帯かどうかで金額が変わる設計です。課税世帯にとっては「無料」ではなく「割引」であることを前提に見積もる必要があります。そして奨学資金の30日という期限のように、知らなければ落とすだけの条件が混ざっています。糸島市の制度は、自分から取りに行く人に報いる作りだと言えます。