奨学金を返している社会人に、5年で最大100万円を出す区があります。子育て世帯向けではありません。
北区の子育て支援とは、東京23区共通の制度(子ども医療費無料、ベビーシッター年144時間助成)に、区独自の上乗せを重ねたものです。北区の特徴は、子育て世帯より先に「奨学金を返している若手社会人」に大きな金額を置いている点と、各種助成の条件が非課税世帯向けに絞られている点にあります。収録している北区の13制度から、金額と条件を整理します。
奨学金返済支援給付事業=5年で最大100万円
1人につき5年間で最大1,000,000円。1年目100,000円から5年目300,000円まで段階的に増額されます。
対象は令和8年1月1日時点で北区に住民登録があり、奨学金を遅滞なく返済している方。給付額は前年度に実際に返済した額が上限で、年ごとの上限額に達しない場合は返済相当額だけになります。
つまり年間30万円を受け取るには、前年度に30万円返済している必要があります。返済額が年10万円なら、5年目でも給付は10万円です。
足立区も同種の制度を持っていますが(1年間の返済額の2分の1・年額上限10万円・最長10年で通算100万円)、北区は2分の1ではなく返済額そのものが上限で、年30万円まで伸びます。返済額が大きい人ほど北区が有利です。
この制度は子どものいる世帯向けではありません。20代・30代の単身者にも効きます。住む場所を選ぶ段階で知っておく価値のある制度です。
給食費は無償、ただし区立に限る
北区立学校に在籍し給食を受けている児童生徒1人につき、給食費の全額を区が負担します。年額は学年により小学1・2年生67,470円から中学校84,550円相当です。
対象は北区立学校の在籍者に限られます。北区在住でも他自治体の学校や私立・国立学校に通う場合は対象外です。杉並区(年71,500〜82,500円)や新宿区(中学生年87,000円)、墨田区(年30,000円)のように私立へ通う子に現金を出す制度は、北区にはありません。
アレルギー等で給食を受けず弁当を持参する場合は、本制度ではなく別の補助制度の扱いになります。
安心ママパパヘルパーは「毎月2時間無料」
子ども1人につき毎月最初の2時間は無料。超過分は世帯の課税状況と子どもの人数に応じて1時間500〜1,000円です。
この制度には見落としやすい条件があります。**支援を受けられるのは保護者と子どもが在宅で一緒にいるときのみ**で、在宅勤務中や別の部屋にいる場合は「在宅」とみなされず利用できません。家事を任せて仕事をする、という使い方はできない設計です。
無料枠が毎月2時間ずつ積み上がる形なので、1年で24時間分が無料になります。総枠で数百時間を出す台東区・港区とは方式が違います。
ファミリー・サポートの助成は対象世帯が限定
1世帯につきサポート会員に支払った謝礼金の2分の1を助成、月額上限20,000円(年額換算240,000円)。
金額は大きいのですが、対象が絞られています。生活保護・児童扶養手当の受給、住民税非課税、育児と介護を同時に担うダブルケア世帯のいずれかに該当する場合に限られます。一般の課税世帯は対象外です。
助成されるのは謝礼金の2分の1のみで、交通費や食事代などの実費、キャンセル料は対象外です。
産後ケアは型ごとに期限が違う
宿泊型は産後4か月0日までに3泊4日まで(1日3,300円)、日帰り型は産後6か月0日までに6日まで(1日2,500円)、訪問型は産後1年以内に3回まで(1回1,000円)。
住民税非課税世帯および生活保護世帯は自己負担が免除されます。双子以上の場合は1人につき宿泊型1,100円・日帰り型840円・訪問型340円の加算です。
医療行為が必要な状態、または発熱や風邪症状等の感染症の疑いがある場合は利用できません。
多胎児家庭の支援
多胎児家庭移動経費支援事業は、1世帯につき1回24,000円分のタクシー代相当のこども商品券。0歳・1歳・2歳の各年齢時に申請でき、3年で72,000円分です。墨田区・豊島区・江東区・葛飾区・江戸川区と同額で、この部分は23区でほぼ横並びです。
ただし使える場面が限定されています。乳幼児健診、予防接種、産後ケア事業、多胎児家庭の交流会、健康相談、健康支援センターでの面談など、指定された事業を利用する際の移動に限られます。買い物や通院一般には使えません。申請は子どもが3歳になる前までです。
多胎妊婦健康診査助成金は、15〜19回目の妊婦健診(最大5回分)を対象に1回あたり上限5,140円(令和8年4月〜令和9年3月受診分)。標準の14回分の受診票をすべて使い切った後の受診が条件です。
初回産科受診料助成は非課税世帯向け
1妊娠につき上限10,000円。住民税非課税世帯または同等の所得水準であることが必須条件です。
北区で「ハピママ・たまご面接」を受けていること、所得確認と医療機関への情報提供に同意することも要件になります。
里帰り出産・新生児の検査費
1か月児健康診査助成金は対象児1人につき1回限り上限6,000円、新生児聴覚検査助成金は上限3,000円。
いずれも「都外の非委託医療機関で自費で受けた」場合が対象です。都内の委託医療機関で受診票を使った場合は対象外になります。新生児聴覚検査は初回スクリーニングを生後50日までに終えていることも条件です。
子どもショートステイ
児童1人につき1日(1泊)2,000円。生活保護受給世帯や住民税非課税世帯は減額があります。
受け入れ先は星美ホーム(北区赤羽台4-2-14)の1か所で、1日の定員は7人です。空きがないと利用できません。2歳未満は本事業ではなく乳幼児ショートステイ事業の対象になります。
私立幼稚園の入園料補助は8万円
園児1人につき入園料補助は上限80,000円(初回入園時1回、所得にかかわらず)。保育料補助は世帯の所得区分と第何子かに応じて月額25,700〜40,000円(年額308,400〜480,000円)、預かり保育料補助は月額上限11,300円(満3歳児は16,300円)です。
入園料の8万円は、大田区13万円・世田谷区12万円に次ぐ水準です。保育料補助を受けるには「施設等利用給付認定」が必要になります。
北区をどう見るか
北区には出産祝金・バースデーサポート・乳児手当といった区独自の現金給付がありません。0〜2歳で受け取れる額で比べると23区の下位です。ファミリー・サポートの助成も初回産科受診料助成も非課税世帯向けで、一般の課税世帯には効きません。
最も大きい制度は奨学金返済支援の5年で最大100万円で、これは子育て世帯向けではありません。北区は「返済を抱えた若手に住んでもらう」方向に予算を置いている区だと読むのが正確です。
子育て世帯として見るなら、給食費無償と私立幼稚園の入園料8万円、そして安心ママパパヘルパーの毎月2時間無料が中心になります。